朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「これはこれは、朱雀の巫女様であられるではありませんか。わたくしったら先を急ぐあまり気付きませんでしたわ。どうかご無礼をお許しくださいませ」
女性はわざとらしく品を作り頭を下げた。
思いっきり目が合ってたけどな、と思ったけれど、柚も慌てて頭を下げた。
「いえいえ、私の方こそ、いつも皆が避けてくれるから、それに甘えていました。気が付いた方が避けるのが当然ですよね。ちょっと調子に乗っていたかもしれません」
女性に従えていた御付きの人達は顔を見合わせて戸惑いの表情を浮かべた。
まさか帝の寵愛人である柚が、そんなことを言うとは思ってもいなかったのであろう。
一方、女性は一瞬気にくわなそうに顔を歪めた後、真っ赤な唇の口角をニヤリと上げた。
「そうかもしれませんわね。帝の妃になるとはいっても、最近夜の訪れがないらしいではありませんか。
それではわたくしと同じ、お手付きの立場と変わりませんわね。
もう一度わたくしが帝の寵愛をもらい、子供をもうければ一気にわたくしとあなたの立場は逆転しますわね」
「は?」
「それでは失礼いたします」
女性は軽く頭を下げて、衣擦れの音を響かせながら去って行った。
(……お手付きって、なんだ?)
後に残された柚は、本日三度目のもやもやが襲ってきた。
意味はよく分からなかったけれど、嫌味を言われたということだけは分かった。
なんで初めて会った奴に嫌味言われなきゃいけないんだよと思い、むしゃくしゃする気持ちは膨れ上がっていく一方だった。
女性はわざとらしく品を作り頭を下げた。
思いっきり目が合ってたけどな、と思ったけれど、柚も慌てて頭を下げた。
「いえいえ、私の方こそ、いつも皆が避けてくれるから、それに甘えていました。気が付いた方が避けるのが当然ですよね。ちょっと調子に乗っていたかもしれません」
女性に従えていた御付きの人達は顔を見合わせて戸惑いの表情を浮かべた。
まさか帝の寵愛人である柚が、そんなことを言うとは思ってもいなかったのであろう。
一方、女性は一瞬気にくわなそうに顔を歪めた後、真っ赤な唇の口角をニヤリと上げた。
「そうかもしれませんわね。帝の妃になるとはいっても、最近夜の訪れがないらしいではありませんか。
それではわたくしと同じ、お手付きの立場と変わりませんわね。
もう一度わたくしが帝の寵愛をもらい、子供をもうければ一気にわたくしとあなたの立場は逆転しますわね」
「は?」
「それでは失礼いたします」
女性は軽く頭を下げて、衣擦れの音を響かせながら去って行った。
(……お手付きって、なんだ?)
後に残された柚は、本日三度目のもやもやが襲ってきた。
意味はよく分からなかったけれど、嫌味を言われたということだけは分かった。
なんで初めて会った奴に嫌味言われなきゃいけないんだよと思い、むしゃくしゃする気持ちは膨れ上がっていく一方だった。