朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
(何を話しているんだ?)


柚が呆気に取られて見ていると、暁が満足気な様子で戻ってきた。


「喜べ柚、飯にありつけるぞ」


「本当か!? 何の交渉をしていたんだ?」


「それはおいおい話すとして、まずは飯だ。私も腹が減った」


 側仕えの女に案内され別宅に通されると、とても丁寧な扱いを受けた。


別宅には家具などは何もなく、ただ木目の床が広がっているばかりで、十二畳ほどの体育館を小さくしたような造りだった。


ほどなくして膳に並べられた食事が運ばれてきた。


膳には小さな漆器がたくさん並び、野菜を茹でたものや焼鮑、干し蛸や海鼠まであった。


麦が入ったご飯も柔らかく炊いてあり、とても美味しい。


二人はそれらを夢中で食べ、おかわりを言っても嫌な顔一つされなかった。


 暗くなると部屋の燭台に火が灯され、寝所まで用意してくれた。


寝所といっても食事をした別宅の部屋に大人一人が横になれるだけの畳を敷いただけの簡素なものだった。


部屋の真ん中には、屏風で仕切りを作ってもらったので、暁と横になって寝るという事態は避けられそうだ。


 怒涛のようなわけの分からない一日だったので柚はとても疲れており、横になってウトウトし始めた。


どうしたら元の世界に戻れるのかとか考えなければいけないことは山積みだったが睡魔には勝てなかった。


暁の目的も、この家の主人がどうして親切にしてくれるのかなど、聞きたいことも沢山あったけれど、とりあえず全て明日にしようと決め、深い眠りに落ちた。
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