朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 そして、柚の教育係りに指名された人物――そう、今まさに机に突っ伏して物思いにふけっている柚を鋭い眼差しで睨みつけている美男子が、これまた厄介な人物だった。


 見た目や性格はいかにも官僚や学者、または大豪邸に仕える執事のような風情(ふぜい)で、身なりは地味だがいつもきちんとしている。


目は細く、口を真一文字に結び愛想はないが、顔は薄めで整っているし、身長が高いので美男子ではある。


しかし何分(なにぶん)、真面目で固く融通がきかない。


 見た目は全く違うが、貴次と似たような性質を持っている。


貴次と違って嫌味を言うことはないが、柚は面白味がなく理詰めで話す如月が苦手だった。


よって、ただでさえ勉強が嫌いなのに、一日中如月と顔を合わせていなければいけないので、さらに気が滅入るのであった。


「恐れ入りますが柚様、私めの話を聞いていらっしゃいますか?」


 机にぐてーっと突っ伏しながら、柚は少しだけ顔を上げた。


「ああ、全然聞いてなかった」


 この女(あま)、とこめかみをピクピクさせながら如月は思った。


しかし如月は優秀な官吏なので、もちろんそんなことは口にしない。
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