朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「帝っ! 大丈夫でございますか!?」


「な、何を言っておる。柚が余のために作った甘味がまずいわけなかろうが」


「いえ、まずいなんて一言も言っておりません。帝の顔色の悪さを心配しているのです」


「気のせいであろう。柚の手料理を食べられるなんて、余は幸せ者だなあ」


 ハハハハ、と妙に高い声で暁は笑い、役人にこれ以上顔を見られないように歩き出した。


役人も、まさか本当に毒が入っているとは思っていなかったので、特に気にすることもなく自分の仕事に戻っていった。


 このやりとりをこっそり聞いていた人物がいた。


昇香付きの侍女である。


今宵、暁が柚の元へ訪れると聞いた侍女は、その旨を報告しに急いで昇香の元へ走った。


 そして由良の思惑が詰まった寒天を食べてしまった暁は、額に汗を流しながら残った仕事を片付けていた。


早く仕事を終わらせて柚の元へ行きたいと思うのだが、頭がクラクラして全く仕事がはかどらない。


なんだか妙にムラムラするし、女の裸ばかりが脳裏に浮かぶ。


しまいには若い男の尻を目で追っていて、そんな自分に気付いてぎょっとした。


(余は少し疲れているのかもしれぬ……)
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