朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 どう考えても柚が作った寒天を食べてからおかしくなったのだが、この体調のおかしさが柚の寒天のせいだとは思っていなかった。


これはひとえに愛によるもので、一種の盲目だった。


本気でこの体調のおかしさが柚の寒天のせいだとは思っていないのだから、愛とは恐ろしいものである。


 なんとか仕事を終わらせると、もう日が沈んでいた。


男にすら発情してしまうのに、こんな状態で柚に会ったら大変だと暁自身思うのだが、今宵行くと言ってしまったし、お礼だけでも言わなくてはと思い、フラフラしながら柚の部屋へ向かった。


 
 外はもう真っ暗闇で、采女は火を灯した燭台を持ちながら、暁を柚の部屋へと誘導していた。


暁はぼーっとしてきた頭で、采女の灯す明かりを頼りに一歩一歩進んでいく。


足元を照らすためだけの燭台の小さな灯りは、采女の後ろ姿をも、ぼんやりと官能的に照らしだしていた。


采女は長い黒髪を巫女のように一つに結んでいる。


結ぶことにより細くて白いうなじがほんの少しだけ見えるのも、暁の官能を刺激した。


女性らしい仕草で、しずしずと歩いているのも、クラクラするほど魅惑的だ。


今までそんな風に見たことなどなかったのに、後ろから抱きしめたいという欲望が襲ってきて、暁は自分が恐ろしくなった。
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