朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「暁、遅いな」


今宵久々に暁が来るというので、柚はドキドキしながら待っていた。


楽しみ反面、緊張もある。


暁とはこの所まともに会話していなかったし、先日キスを拒まれたばかりだ。


会うのはなんとなく躊躇(ためら)いもあるが、暁に会えるのはやっぱり嬉しかった。


由良も出払ったので、そろそろ到着しても良い頃なのであるが、暁は一向に訪れる気配がない。


耳を澄まして、暁の足音が聞こえてこないかずっと集中しているのも疲れてきた。


柚はなんだかがっかりしてしまって、会う楽しみが急速に萎えていった。


とはいっても、暁に会えばそんな苛々一瞬で吹き飛ぶのだが。


(暁は一体何をしているのだろう。どこかで道草でも食ってるんじゃないのか? こっちはずっと待ってるのに、人の気も知らないで呑気な奴だなあ)


 柚は大きく伸びをして立ち上がった。


(よし、私から迎えに行ってやろう)


 迎えに行き柚と出会った時の、暁の驚く顔を想像して、柚はニヤリと笑った。
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