朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
すると突然、燭台の火が消え辺りは真っ暗になった。


暗闇が怖い柚は、「わっ!」と叫んで暁に抱きついた。


「なんだ、やめろと言ったのは、明るいのが恥ずかしかっただけなのか。可愛いな、柚は」


「ち、違う!」


 そうは言いつつも、全く何も見えない状態は震えるほど怖く、抱きついた腕を離すことはできない。


「柚、気持ちは嬉しいが、そんなに強く抱きつかれたら脱がすことができないぞ」


「灯り……灯りつけて」


 柚は肩を震わせ、暁の胸に顔を埋めたまま、消え入るような声で懇願した。


柚の震える声に、暁もようやく異常だと気付き、上体を起こして柚の頭を優しく撫でた。


「風もないのに火が消えた。それにこの紫煙と匂いはなんだ」


 暁は柚を抱きしめながら、辺りを見渡した。


すると、ズズズ…と何かが床を這うような音が聞こえた。


柚もその不気味な音に気付き、恐る恐る暁の腕の中から顔を出す。


すると暗闇の中でよく見えないが、確かに何かが動く気配がした。


「嫌ぁーーー! 出たーーー!」
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