朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
その夜、柚は久しぶりに薄衣を身に纏い、軽く化粧をして暁の訪れを待っていた。


采女が歩く衣擦れの音の後に、男らしく歩を進める暁の足音が近づいてきて、柚の心臓は煩いほど鳴っていた。


久しぶりに会う暁。


どんな顔をして会えばいいいいのか分からない。


けれど、どうしても伝えなければいけないことがある。


柚は覚悟を決めて、暁の到着を待った。


 一方、あれからずっと訪問を拒絶されていたのに、突然柚の方から呼ばれて、暁は少し戸惑っていた。


嬉しい気持ちもある反面、不安な気持ちもあった。


柚は許してくれたのか。


それともまだ怒っているのか。


あの状況では仕方なかったこととはいえ、柚にあのような場面を見られ傷つけてしまったことは事実なので、暁の心に重い石のように罪悪感がずっしりと残っていた。


 采女が施錠具を外し、扉を開けると一礼をして去っていった。


暁は戦に挑むような気持ちで、ぐっと腹に力を込めて部屋に入った。


 柚は珍しく正座をし、三つ指を立てて頭を下げている。


帝が来る時の正式な待ち方なのだが、なんだか他人行儀な気がして柚との間に壁を感じた。
< 298 / 342 >

この作品をシェア

pagetop