朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「鳥が喋った!」


 仰け反りながら叫ぶと、紅い鳥も驚いたのか仕舞っていた大きな羽を伸ばした。


羽も紅く鷲のように固そうだ。


「なんだこいつ、俺様の言葉が聞こえるのか?」


「また喋った! どうなってんだよ!」


「ほほう、本当に聞こえているようだ。これは面白い。もっと色気があって巨乳だったら、もっとテンションが上がるのだがな」


 紅い鳥は残念そうに言ったが、顔はニヤニヤしているように見えた。


柚はとても失礼なことを言われ腹が立つ部分はもちろんあるが、それよりも目の前で鳥が言葉を喋るという奇怪さが上回って怒る気にもなれない。


オウムなど人間の言葉を覚えて話す鳥もいるが、この鳥はその域を軽く超えている。


「なんだよこいつ、化け物か。それとも、幽霊が鳥に乗り移って……」


「なんだ女、俺様を物の怪か何かだと思っているのか?
俺様は朱雀だ。
何千、何百年もの時を越え生き続ける神獣だ」


「朱雀……?
朱雀って聞いたことある。伝説の鳥だろ。
伝説ってことは架空の生き物で、現実にはいるはずのない存在じゃないか」


「そう、俺様は伝説の神鳥。
そしてお前はどうやら伝説の朱雀の巫女らしい」


「は?」


 思わず間抜けな声で聞き返す。


誰が朱雀の巫女だって?
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