朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「今夜は初夜であるぞ。余の一番の楽しみを潰す気か」


 ニヤリと笑って発せられた言葉に、思わず柚は顔が真っ赤になった。


「そうでしたな。これは無粋なことを申しました」


 皆がニヤニヤと笑っているので、柚は俯いたまま顔を上げることができなかった。


 ……暁の奴~!


 柚が心の中で暁を罵倒する中、暁は上機嫌で皆に笑顔を見せていた。


「良いのだ、良いのだ。余は明日、しばらく起きてこないと思うから、皆も十分に楽しむと良い」


「腰を痛めませんように」


「次の祝いの宴は、世継ぎ誕生ですかな」


などと下品な野次が飛ぶ中、暁は満面の笑みを見せて皆に手を振りながら立ち去った。


柚はもう、穴があったら入りたいくらい恥ずかしくて、早くこの場から去りたいと足早に暁の後を追う。


 渡殿でようやく二人きりになれると、柚は溜まっていたものを吐き出した。


「なんで皆の前であんなこと言うんだよ!」


 怒っている様子に、暁はきょとんとした表情だ。


「柚はまだあの場にいたかったのか?」


「そうじゃなくて! あんなこと言わなくてもいいだろ!」


「だが、本当のことであろう? 今夜は、余が待ちに待った初夜だ」


「そ、そうだけど……」
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