朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 思わず言葉尻を濁してしまう。


覚悟はできているとはいえ、こうはっきり言われると恥ずかしくなってしまう。


「どうしたのだ? まさか今更嫌になったとか……」


 暁は真っ青になって言った。慌てて柚は顔を上げる。


「そんなことないっ!…… もう覚悟は決めたから」


思わず大きな声を出してしまう。


暁を散々振りまわしてしまっていたことが分かった今、暁の気持ちに精一杯応えたかった。


 柚の勢いに驚いた様子の暁だったが、柚の気持ちが伝わったのか柔和な笑顔を見せた。


「うむ、楽しみにしている」


 頭をポンと撫でられる。


柚はそれだけで幸せな気持ちになった。


「しまったな。寝所まで待てぬ。今ここで押し倒してしまいそうだ」


 真顔で言うので、本気度合いが伝わってくる。


柚は思わず青くなった。


「いや、そんな、もうすぐだし……」


 ひょいと簡単に持ち上げられ、いわゆるお姫様だっこ状態になった柚は、「ひゃっ」と声が漏れた。


「そのすぐが待てぬのだ。少し走るぞ」


「待てって! そんな人さらいみたいな……って、わぁぁ!」


 少し走るぞと言っていたが、暁の走りはとても速く、まるで馬にでも乗っているかのようだった。
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