朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
皇族が物の怪に狙われ死者まで出ている以上、宮で働く貴族たちはそれを断ることができない。

物の怪の怒りを鎮める生贄として泣く泣く娘を差し出しているのだ。

この家の者もそうだ。物の怪から狙われ、娘を差し出さねばいけない所に、余が柚を身代わりにする案を持ちかけたのだ。

貴族の娘は家族以外には滅多なことがなければ顔を見せない。

だから身代わりにしてもばれる心配はないから、この家の主人は泣いて喜び歓迎してくれたのだ」


「物の怪!? でもこいつらは物の怪じゃないぞ、人間だ! しかもよく見たら昼間の男たちも交じっているじゃないか!」


 柚が捕えられている男たちを指さすと、暁は「うむ」と言って満足気な笑みを浮かべた。


「余も都で噂されている物の怪の話はどこかおかしいとは思っていたのだ。

宮の物の怪は人を攫ったりしないし、文も書かぬ。

しかし、もしかしたら共通点があるやもしれぬと思い、宮から抜け出し物の怪について調べていたら、昼間の男たちが攫った女たちについて話しているのを目撃してな。

攫われたふりをしたら何か分かるかもしれぬと思ったんだ。

そんな所に柚が現れて、計画を邪魔されたから、娘の身代わりをして物の怪と対峙しようと方向転換したのだ」
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