朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「え?」


「柚は俺様のお気に入りだ。

俺様が何もできない間に柚を女にしやがって。

まあ、過ぎたことは仕方ない。

だが、これからはお前たちの邪魔してやるからな。みてろよ」


 暁は自分の耳がおかしくなったのかと思った。


赤ん坊は口を大きく開けて泣き続けているから、赤ん坊の口から言葉が発せられているのではない。


けれど、確かに赤ん坊から朱雀の声が聞こえ、暁に話し掛けている。


「邪魔するとはどういうことだ?」


 不思議なことはさておき、赤ん坊に問いかけてみた。


しかし、赤ん坊はただ泣き続けているだけだ。


「おまたせ!」


 息を切らした柚が、毛布に赤ん坊を包み込み抱き上げる。


すると、さっきまで泣いていた赤ん坊はピタリと泣きやみ、柚のことをじっと見つめ微笑んだ。
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