朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「いや私、権力とか興味ないし」


「それに柚様に与えられたこのお部屋。

大きく素晴らしい造りであることに加え、後宮とは離れた場所に置かれています。

これは女たちから嫉妬され柚様が嫌な思いをしないようにと、帝からの思し召しにございます。

これほどの寵愛を受けておいでながら、これ以上何にご不満があるというのですか」


「不満っていうか、知り合って間もない男と結婚するのは抵抗あるんだよ。

やっぱり結婚するなら好きになった男としたいからさ」


 柚は人差し指で鼻を擦りながらキザっぽく言いながらも、自分にはなんて似合わない言葉だろうと思った。


好きになった男としたいって、今まで誰かを好きになったことすらないのに。


「それならきっと大丈夫です。

帝は家来からの信頼も厚く、人格者でもあると聞いております。

そんなお優しい帝からの寵愛を受ければ、好きにならぬ女などいません」


 断言する由良を見て、柚は目をぱちくりさせた。


「なあ、もしかして由良、帝のことが好きなのか?」


「まあ、何をおっしゃられるかと思ったら。どうしてそう思ったのですか?」


「いや、あまりにも暁のこと褒めるから」


「ああ、それならご安心くださいませ。わたくしには他に想い人がおりますから」


 由良はぽっと頬を桃色に染め、睫毛を伏せた。
< 43 / 342 >

この作品をシェア

pagetop