朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「そうなんだ。でも、やっぱり結婚はなぁ。てか、なんで暁は突然私を妃にするなんて言ったんだろ」


「それは、柚様がお美しいからでしょう」


「ははは、冗談でしょ。男に間違われる女が綺麗なはずないって」


「男に間違われる? 柚様、それこそご冗談でしょう」


「冗談じゃないって。ほら」


 そう言うと柚は被っていたかつらを取った。


髪が短い柚の姿を見た由良は、あっと驚いて両手で口を塞いだ。


「な、男みたいだろ? 暁もこの姿見てるし、私のこと好きになるはずないんだよ。もっとも髪が長くても惚れるはずないんだけどね」


 柚は再びかつらを被り、自嘲ぎみに笑った。


「驚きましたが、それでも柚様がお美しいことに変わりはありません!」


「いいって、無理に励まさなくても」


 由良は、どんなに言っても信じてくれないので、口惜しくて唇を噛んだ。


「本当でございますのに」と呟いた由良の言葉は柚には聞こえないようだった。


そして柚は、どうして暁が柚を妃にすると言ったのかが、ひらめくように突然分かった。
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