朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「どうだ、余はなかなか上手いであろう?」


「な…っにが上手いだ! 何すんだバカ野郎!」


「なんだ、柚は初めてであったのか?」


 図星の柚は顔を真っ赤に染めた。


「そうか、刺激がちと強すぎたか。今度からはもう少し抑えることにしよう」


「今度なんかあってたまるか! もう怒ったぞ。私はここを出て行く!」


 柚はいきり立ち、ドカドカと大股で床を踏みしめて扉に向かった。


「出て行くってどこに行くのだ」


「どこでも! お前のいない所だ!」


「こんな夜中に一人で宮内を歩いたら物の怪に出くわすかもしれないぞ」


 柚は「うっ」と唸って、扉の前で足を止めた。


「余の側にいれば安心だ。余が柚を守ってやる。ほれほれ、こっちへ来い」


 いつの間にか暁は寝台の上に座っており、満面の笑みで寝台を叩きながら手招きしている。


柚にとっては、その笑顔がなんとも不気味で、暁の元へ行けばどうなるのか、由良が持ってきた春画の絵が頭によぎった。


絶対に嫌である。


しかし、扉を開けて暗くて道も分からない場所を歩くのも怖かった。
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