朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「物の怪、怖いけど、こういうことするのも嫌だ。

もう私には逃げる場所がないんだ。

八方塞がりだ。最悪だ、最低だ。私の人生、もう終わったああ~~~」


 柚は大きな声を出して泣いた。


大粒の涙は止まるどころか、更に勢いよく溢れ出し、暁の袖で拭いきれないほどだった。


「分かった、分かった柚。

余は柚に強制はしない。

あのようなことは……柚がいいと言うまではしないと誓おう。

そして、物の怪が怖いなら、余の側にいるといい。

余は何もしないから、安心して眠るといい」


「……本当か?」


 柚の涙はピタリと止み、上目使いで暁を見上げた。


「ああ、約束しよう」


 柚の涙が止まったので、暁はほっと安堵し、優しい笑顔を浮かべた。


現金な柚は、さっきまで子供のようにわんわん泣いていたのもどこへやら、パアっと花咲くような明るい笑顔になって「良かった!」と言った。
< 64 / 342 >

この作品をシェア

pagetop