朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
一方、二人の気持ちなど全く分かっていない柚は、だんだん部屋での生活に飽きてきた。


ついに我慢ができなくなった柚は無理を言い、由良が側で付き添うことを条件に、宮廷内を少しだけ散策することを許された。


煌びやかな背子を羽織り、宝珠や宝髻をつけ、渡殿を歩いた。


すると、宮内で働く采女や侍女たちは、柚が通ると、足を止め深く頭を下げるのだが、柚が通り過ぎた後は、鋭い眼差しで柚のことを睨んでいた。


あまりにも強い敵対心を感じるので、あまり歩いていないにも関わらず、どっと疲れてしまって、柚は早々に部屋へと戻った。


「私は嫌われているんだな」


 柚が肩を落として、落ち込みながらポツリと呟くと、由良が慰めるように言った。


「前に申した通り、帝は大変人気のある御方。その帝からの寵愛を受ける柚様が憎くて仕方ないのでございましょう」


「憎い……か」


 昔から美少年に見えるせいか、女子から好かれることが多かった為、あからさまに女子から嫌われるということがなく戸惑いを覚えた。
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