朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
(別に好きで妃になったわけじゃないのになぁ……)


 柚は大きなため息を吐いた。


塞ぎ込む柚を見て心配になった由良は、何か気分転換になることはないかと頭を巡らせた。


「そうだ、柚様、お庭を散歩してみてはどうでしょう。

部屋に併設された庭園は、柚様だけのものでございますし、そこなら誰にも会うことなく御心を休めることができます。

池には鯉も泳いでいますし、新鮮な空気を吸って気晴らしをしてはいかがでしょう」


「庭か……」


「わたくしは他に仕事がありますので、少しお側を離れます」


「そうか、分かった。ちょっと出てみるよ」


 由良が部屋を下がると、柚は一人庭に出てみた。


柚のためだけの庭園は、松や白砂が優美な趣を醸し出していた。


柚は襪を脱ぎ、素足で地面に降りた。


足裏に感じる冷たく固い感触に、笑い出しそうなくらい嬉しさを感じた。


鼻を通る草木の香りや、心地よい風を肌に感じ、生き返るような気持ちだった。


 柚は誰にも見られていないという安心感から、子供のように庭を駆けまわった。


元々、じっとはしていられない性格である、何かしていないと気がおかしくなりそうだった。
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