朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「稚夜様、やはりここにいらっしゃいましたか。あんなに駄目と申したのに、なぜ会いに来たのですか」


「姉さまは、僕の姉さまになる人なんだ! どうして会いにきちゃいけないんだ!」


「高貴な女性は、むやみに男の前で顔を晒せないのでございます」


「でも、僕は弟になるんだ」


「しかし、このような乱暴な形で会いに来てはいけないのです。

我儘を言って貴次を困らせるのはやめてください。

それに……私はこの方を帝の妃として認めたわけではない」


 最後の言葉を貴次は、冷たい目線で柚を睨みつけて言った。


柚を侮蔑し、刺すような鋭い視線に柚は固まった。


「さあ、稚夜様、帰りましょう。本日分のお勉強がまだ残っております」


 貴次は、稚夜の手を取り、柚に一言の挨拶もなしに背を向けた。


稚夜は悲しそうに、柚に小さな手でバイバイするように手を振った。


 二人が柚の部屋を通り帰っていくと、柚は言い知れぬ感情が沸き起こってきた。


(あの、貴次って奴、なんかムカつく!)


 柚は貴次が去っていった方向に向かって、「い~だっ!」と思いっきり歯を向けて言ってやった。
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