朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「ん? この香りは……」


「あ、分かった? 由良がお香を焚いたんだ」


「これは明日葉の匂い」


「へえ、そうなんだ。いい匂いだよな、落ち着くし」


 明日葉を配合した香は、男性をその気にさせる香りとして巷でひそかに流行っているので、暁も嗅いだことがあった。


ほんのり甘くスパイシーな香りは、媚薬のような成分で男性をその気にさせるが、女性には不安な時や気分が沈んでいる時に気持ちを落ち着かせる効果があるという。


(余がその気になっても、柚がその気にならねば意味がないのだが……)


 暁は柚に気付かれないように、こっそりとため息を吐いた。


 柚が大きな欠伸をし始めたので、二人一緒に寝所へと移った。


柚は寝台に寝転がると、暁に背を向けた。最初の数日は少し警戒の色が見えたが、今では全く警戒していない様子の柚を見て、暁は少しムッとした。


このままでは一向に距離が縮まない。


考えた末に暁は、少し大胆な行動に出ようと思い立った。


決心するとワクワクするような悪戯心が湧いてきた。


後ろから、柚を抱きしめる。


すると、柚は途端に身を固くした。
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