朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「そうだ。父がある一族を滅ぼしに行った時に、一族の巫女姫を見初めて無理やり求婚し、そしてできたのが稚夜なのだ。

父が稚夜の一族を滅ぼしてしまったから、稚夜には身寄りが誰一人いないのだ」


「そうだったのか。可哀そうな子なんだな」


「しかし稚夜は反抗することなく、とても真っ直ぐに育っておるぞ。

稚夜は生まれつき身体は弱いが、とても賢いのだ。

特に数字や暦に興味があるらしく、すでに大人顔負けの知識があるらしいぞ」


「へえ」


 暁がとても嬉しそうに弟のことを語るので、柚は家族のことを思い出して、なんだか寂しくなってきた。


柚にも弟がいて、生意気でいつも喧嘩ばかりしていたけれど、そんな弟でも会いたくて仕方なくなってきた。


どうやったら帰れるのか、または帰ることができるのか。


家族は、柚が突然いなくなってどれほど心配しているだろうと思うと心が痛んだ。


 急に元気がなくなった柚に気付いた暁は、柚の身体を回転させて、横になりながら真正面から柚の顔を覗き込んだ。


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