朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「今、なかなか楽しそうに生活しているみたいだから、何も今すぐに死ななくてもいいんじゃないのか。死ぬことはいつだってできるんだから」


「うん……」


 柚は力なく答えた。


「それよりも、お前はなかなか危険な世界に飛ばされたみたいだな。

飛ばしたのは俺だが、俺が選んだわけじゃない。

そこの所は勘違いするなよ」


「危険って……、ああ、物の怪がいることか?」


「物の怪ねぇ。俺様は死んで実体のないものより、生きてる人間の方がよっぽど恐ろしいと思うがな。まあ、せいぜい気を付けることだな」


 飛び立とうとしている朱雀に、柚は慌てて声を掛けた。


「おい、もう行くのか!? 次はいつ会える?」


「さあな。馬鹿で貧乳の女にはあんまり興味がないからな。気が向いたら、また会いに来るさ」


 そう言うと、朱雀は空へと飛び立ってしまった。


あっという間に朱雀の姿が見えなくなった空を、柚はしばらくの間じっと見つめていた。
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