朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
第十話 複雑な気持ち
その晩、柚は複雑な心境で暁を出迎えた。


 朱雀と会えて、元の世界に帰れると分かったはいいけれど、死ねばいいと言われたのは予想外だった。


確かにもっとも単純で簡単な方法かもしれないが、自ら死ぬのには抵抗がある。


だからといって余命までずっとこの世界で生きていくとなると、それもためらいがあるし、どうしたらいいのか分からなかった。


 珍しく塞ぎ込み、ため息ばかりを吐いている柚に気付き、暁は声を掛けた。


「どうした、柚。夕飯に嫌いなものでも入っていたのか?」


「違うわ! 私にだって悩み事くらいあるんだ」


「悩み事? 余で良ければ話を聞くぞ」


 心配そうに柚の顔を覗き込む暁の顔を、柚はじっと見つめた。


 朱雀と会ったことを話そうか……。


でも、話したところで何か解決するわけでもないし。


柚はそう思い、そっけなく暁から顔を背けた。


「いい。暁に言ってもどうしようもないし」
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