え!?朝霧ってあたしのこと好きなの!?
「電話だって出てくれないし!」
首を傾げるあたしを余所に、美女さんがぷっと頬を膨らませて言う。
女のあたしから見ても
めっちゃ可愛い…
男なら誰でもデレデレになってしまいそうな所だが、朝霧は「あー寝てた」と素っ気ない。
「嘘ばっかし!ずっと寝てたわけじゃないでしょ!?ていうか起きたらかけ直してよ!」
「うるせーなぁ」
心底面倒臭そうに息を吐き出して、朝霧がグイッとあたしの肩を抱いた。
跳ね上がるあたしの心臓。
「行くぞ」
「え、どっどこに!?」
「…どっか」
「どっかってどこだよっ!?」
「ちょっ…竜平!!」
「…呼んでるけど…」
美女さんが呼ぶ声など完璧無視してあたしを連行していく朝霧にそう聞くと「いいんだよ」と前を向いたまま素っ気ない返事。
「無視しないでよ!?」
そっと振り向くと、きつくあたし達を睨む美女さんと目があった。
あたし達っていうか…主にあたし。
…美女さんって、絶対…
「ど、どういう関係?」
「…何が」
連れてこられたのは屋上だった。
ドカッと寝転がる朝霧に聞く。
「あの美女さんと」
「美女さんって…舞か」
舞っていうんだ…ていうか朝霧、名前で呼んでるんだ…そういえば舞さんも竜平って呼んでたし…
ズキッ
ん!?
「ズキ!?」
「あ?」
「…や、なんでも。それで舞さん、って」
「あー…」
朝霧は少し気まずそうに言い淀むと
「…元カノ」
ボソッと呟くように言った。
…やっぱり。何となくそんな気がしてた。
「……言っとくけど、もう一年くらい経つから。アイツと別れて」
「…へぇ」
「へぇって」
「あたし教室戻るね」
「え、おい榎波?」
ほら。
あたしのことは榎波って呼ぶのに。