え!?朝霧ってあたしのこと好きなの!?
放課後、SHRが終わるやいなや、すぐにカバンを持って教室を出る。
…朝霧が美女さんと一緒にいるのを見たくないから。
朝霧を突き飛ばしてしまったあの日から、二人よく一緒にいるのを見かけるようになった。
「榎波ーっ!!」
もう少しで昇降口、という所で名前を呼ばれた。
振り向くと息を切らせて走ってくる志村が。
「おい!何帰ろうとしてんだよお前!今日委員会だろ!?」
「え!?そうだっけ!?」
あたしと志村は図書委員会に所属している。お互いジャンケンで負けてたまたま。
「そうだよ!ほら行くぞ!?」
志村に腕を引っ張られて歩き出そうとしたら
「っわ、ビビったー」
不機嫌そうにあたしと志村を見る朝霧がいた。
カバンを持っているあたり、帰るところのようだ。
…美女さんと一緒じゃないんだ。
たったそれだけの事で、なんだかホッとしてしまう。
「……邪魔」
朝霧はフイッとあたし達から視線を逸らすと、それだけ言ってあたし達の横をすり抜けていった。
ドク…
ただ横を通っただけなのに、分かりやすく反応するあたしの心臓。
「…なんだよ朝霧、随分淡々としてんじゃん」
志村が朝霧を振り返って不思議そうに首を傾げた。
「いつも俺と榎波が話してるだけでゴチャゴチャ言ってくんのに。
つーか最近、全然話してないよなお前ら。マジで何かあったのか?」
「……あったと言えばあった」
「何だそれ。
まーいいや、行くぞ」
あたしの腕から手を放して先に進む志村。
「おい走れよ、遅刻すんだろ」
そしてそう促す。
「あーい!」
「…マジで悩んでんだったら、そん時は言えよ」
ボソッと聞き取れるか聞き取れないくらいの小さい声だったけど、しっかり聞こえた。
志村はチャラいけど。
佳乃と出会うまでは女遊び激しすぎてドン引きしてたけど。
そして今は佳乃ラブすぎて若干ウザがられてるけど。
中学時代からのあたしの大事な親友、だ。
「……うん」
落ち着いたら佳乃と志村にはちゃんと話そう。
そう思った。