え!?朝霧ってあたしのこと好きなの!?
「……え?」
突然被せるようにしてされた質問に固まってしまった。
「…いるんだろ?好きな奴」
あたしの方は一切見ずに、手元の資料に視線を落としたままなお質問を続けてくる朝霧。
「……え?あの」
「田坂に言ってたの聞いたから知ってる」
「え…」
「……お前と田坂が何すんのか、気になりすぎて追いかけたから。…悪い」
……えっと…あたしが委員長と空き教室で話してたのを聞いてたってことだよね……
「…な、何で?」
「…あ?」
「…な、何で…追いかけたの?あたしと委員長のこと」
ゴクリ、息をのんで朝霧を見つめると。
「………」
無言で顔を上げた朝霧が、なぜか鬼の形相であたしを睨んできて。
「え、え!?」
あたしなんか怒らせるようなこと言った!?
「……俺……言ったよな」
ハァーと大きく息を吐いて、朝霧がガシガシと頭を掻く。
「もう何なのお前……もう、お前、……ほんとやだ。…疲れた」
……“やだ”“疲れた”
拒絶の言葉。
…………告白する前に、拒絶されちゃった、よ………
そんなつもりはないのに、涙がブワッと溢れてきて。
朝霧がそんなあたしを見て、ギョッとしたように目を見開いた。
「……は、何、泣いて…」
「…朝霧だってキスしてたくせに」
「………!」
目を大きく見開く朝霧。
「あたしのこと好きって言ったくせに!美女さんとキスしてたじゃん!!」
あたしに朝霧のことを責める資格はない。
彼女でもないのに。
でも止まらなくて。
「一緒に帰るしっ!一緒にご飯食べてるしっ!…え、笑顔で、話してるしっ!!
もうっ…美女さんが好きなの!?好きになっちゃった?あたしのことなんてもう好きじゃない?」
涙でボヤけて、朝霧の表情は全く分からない。
でもじっと動かず、あたしの話を聞いているのは分かる。
「あたしはっ……朝霧が好き。
朝霧が好きだよ…朝霧が…美女さんを好きでも、あたしはずっと朝霧のこと………っわ」
急に、すごく強い力で。
抱き締められた。