エンドレス・ツール
九時を回ってあたしの梅チューハイがようやくジョッキの三分の二までに減ったとき、翔さんが「お待たせー」と言いながら入ってきた。


この間も見たスーツ姿に胸が高鳴る。


「遅い。キモい。トロい」


ケイゴくんがビールを飲みながら言い放った。


「おい、キモいってなんだよ。今まで授業してたんだからな」

「お疲れ様ですー」

「おー、りーは優しいな」


翔さんがあたしの頭を撫でて隣の椅子に座った。


……すごく嬉しい。


にやけそうになったら、向かい側のなつがひひひとあたしを見てにやけてきた。


「とりあえずジントニック」


傍にいた店員さんに注文して、翔さんは串カツに手を伸ばした。


「あ、それうちのです。璃里香からもらってください」


翔さんの手からなつが串カツを奪い取った。


「えー、俺腹減って死にそうなんだけどー。りー」


翔さんがあたしを見た。


「た、食べかけですっ」

「なんでもいいわ。いただきー」

「あ」


あたしが見届けるうちに、串カツは翔さんの口の中に入っていった。


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