エンドレス・ツール
それでも足りないと言った翔さんはラーメンを注文して、ジントニックを飲み始めた。


「平気なんですね……食べかけとか」


あたしは動揺してしまっていた。


いや、あたしだったら喜んで食べますよ。翔さんの食べかけとか、恥ずかしいけど食べちゃいますけども。


まさか、翔さんが食べるなんて思わなかったから。


つい小声になったけど、それでも隣の翔さんには通じたようだ。


「うん。まあ、意外に平気。りーはもう身内みたいな感覚だし」

「身内って……」

「え、嫌だった?」

「いや、全然……」


この間は妹だったしね。


あたしは全然嫌じゃないけど。むしろ大歓迎。
そんなに近い関係になれるとか鼻血が出るくらい嬉しいですよ。逆上せて体中の水分が鼻から出るくらい嬉しいですよ。あ、それは気持ち悪いけど。


隣にいるから緊張してしまっているのだと思う。


それでも今のこの距離感が嬉しかった。


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