エンドレス・ツール
十時半になってもう帰ろうかと翔さんに言われ、もう何杯目かわからない梅チューハイを飲み干した瞬間、頭がぐらっと揺れた。


「う……」


テーブルに肘をついて額を手で押さえると、翔さんが顔を覗き込んだ。


「りー、大丈夫?」

「大丈夫です。ちょっと……飲み過ぎたかも」

「だから言ったじゃん、もうやめなって」


翔さんが顔をしかめる。


そう。あたしは一時間も前から、翔さんに「もう飲むのやめな」と言われ続けていた。でもその時のあたしはかなりハイになってて「大丈夫大丈夫大丈夫~」なんて翔さんの言葉を受け流していた。


こんなになるとは思っていなかった。


酒に飲まれるとはこういうことなのだと痛む頭の隅で理解した。


「お金は二人が出してくれたからいいとして……。りー、立てる?」

「はい……大丈──」


足に力を入れた瞬間、膝が抜けた。そのまま前に傾く。


「りー!」


翔さんの声と共にあたしは翔さんの腕の中にいた。


「しっかりしてよ、もう……」


翔さんがあたしの脇の下に腕を入れてあたしの体を支える。


「すみません……」


ああもう、あたし何やってるんだ。


全身に力が入らなくて、翔さんに体を預けたままの体制で目を閉じて息を吐く。


頭を翔さんの胸に預けると、翔さんの匂いがし
た。


頭がガンガンする。


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