エンドレス・ツール
「あのね、りー」


マグカップをテーブルに置いて、翔さんが向かい側のあたしを見つめる。


「はい」

「俺はりーのこと、身内みたいに思ってる」

「はい」

「だからね、俺はりーとは付き合えない」

「わかってます」

「りーを抱いたことも、すごく後悔した」

「……はい」

「りーがどうとかいうんじゃない。俺の問題。りーだけはダメだと思ってたんだ。りーだけは、汚い俺に抱かれちゃダメだと思った」

「なんでですか?」

「綺麗なんだよ、りーは。処女とかそういう体の綺麗じゃなくて、中身ね。りーは、俺に抱かれちゃダメだったんだ」


翔さんは、俯いて唇を噛み締めた。


「翔さん、綺麗とか汚いとか、それってなんですか?」

「考え方……の問題かな。俺はね、そこらへんの女を元カノと重ねて抱いてる。りーは違うでしょ?」

「違いますね。あたし、そこまで固執したことないんで」

「そういうことだよ。俺は最低の人間なんだ」

「じゃあ、あたしはどうだったんですか?」


あたしは、強気でいかなければ泣くと思った。


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