エンドレス・ツール
「なんで? だから言ったでしょ、俺はあいつとの関係を──」
「そう言って、逃げてるだけじゃないですか。翔さんがいつまでもはっきりしないから、犠牲者が出て、嫌われて、自業自得じゃないですか。こんなの繰り返したって、誰も幸せになんかなりません。遠距離でも付き合うなり、さっさと忘れるなり、どうにかしてください」
「りー、何を思い上がってんの?」
翔さんはもう笑っていなかった。テーブルに頬づえをついて、真顔であたしを見ている。
「……思い上がるって」
「俺に一度抱かれたからって、何勘違いしてんの? あれだけで俺の中身を知れたと思ったら大間違いだよ。言ったよね、俺は酔えばどんな女でも誰彼構わず抱ける男なの。りーだって例外じゃない。ただ、後悔が残っただけで、他はどこの女とも変わらない」
怖いと思った。
目の前の好きな人を、初めて怖いと思った。
いつもニコニコしてて、「りー」って呼んでくれて、頭を撫でてくれる翔さんは、ここにいない。
あたしは唇を噛み締めて、泣きそうな気持ちを必死に抑えた。
そう。あたしは、思い上がっていた。
「そう言って、逃げてるだけじゃないですか。翔さんがいつまでもはっきりしないから、犠牲者が出て、嫌われて、自業自得じゃないですか。こんなの繰り返したって、誰も幸せになんかなりません。遠距離でも付き合うなり、さっさと忘れるなり、どうにかしてください」
「りー、何を思い上がってんの?」
翔さんはもう笑っていなかった。テーブルに頬づえをついて、真顔であたしを見ている。
「……思い上がるって」
「俺に一度抱かれたからって、何勘違いしてんの? あれだけで俺の中身を知れたと思ったら大間違いだよ。言ったよね、俺は酔えばどんな女でも誰彼構わず抱ける男なの。りーだって例外じゃない。ただ、後悔が残っただけで、他はどこの女とも変わらない」
怖いと思った。
目の前の好きな人を、初めて怖いと思った。
いつもニコニコしてて、「りー」って呼んでくれて、頭を撫でてくれる翔さんは、ここにいない。
あたしは唇を噛み締めて、泣きそうな気持ちを必死に抑えた。
そう。あたしは、思い上がっていた。