エンドレス・ツール
「何泣いてんの?」


声色からして、翔さんがいらついているのがわかる。


どうやらあたしの泣いている姿が嫌いというのは嘘ではなかったらしい。


「同情ですよ。悲しくて泣いているんじゃないです」

「同情?」

「あなたは本当に悲しい人です」

「何それ、どういうこと?」


あたしは顔を上げる。わずかにぼやける視界に映る翔さんの顔を真っすぐ見つめた。


「そんなことでしか自分が作った傷を隠せないんですから。怖くて何もできないから、他の女を元カノと見立てて抱くことでしか隙間を埋められない。本当に弱いですよね。情けくらいかけたくなりますよ」

「俺をバカにしてんの?」

「逆ギレですか。言わせてもらいますけど、あたし、そんな翔さんなんか嫌いです」


きっぱりと言い放つ。言ってしまうと、妙にすっきりした。


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