エンドレス・ツール
「璃里香ちゃーんっ」

「……重い」


その二年の間で、この男は変わらなかった。


「……離れて」

「相変わらず冷たいー。璃里香ちゃん」

「……何ですか」

「俺と付き合おう!」

「彼女に言ってやって」


高橋くんには実は彼女がいたのだ。


しかも、高校からの長い付き合いの彼女が。


「なんであたしに構うの? 彼女のもとに行けばいいじゃん」

「彼女は北海道に置いてきたもん。会いたくても会えないから、二番手の璃里香ちゃんに構うのー」

「……最低」


高橋くんって、北海道出身だったっけ。


「安心して。付き合おうってのは本気じゃないからさ。俺、一途って言ったでしょ」

「……好きってのは」

「彼女の次に、って意味ー!」


一瞬でも浮かれたあたしがばかだった。


「あたしに構ってる暇があったら、彼女と電話してなよ。ほら、携帯鳴ってるよ」

「あ、美和からだ。じゃ、またねー、璃里香ちゃん」


もう来なくていいよ、という言葉は、遠ざかる高橋くんの姿とともに消えた。


高橋くんと翔さんは似ていないのが逆に幸いしたのかもしれない。


始めこそ高橋くんを避けていたあたしだけど、翔さんの面影を感じさせない高橋くんといても、不思議と普通に話せた。


< 167 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop