エンドレス・ツール
「来ないかと思ってた」


翔さんがあたしの隣に座ってきた。あたしが正座しているのを見ると、笑って「楽にして」と頭をぽんぽんと撫でできた。


「誘ってきたのは翔さんでしょう」

「夏香ちゃんを誘い出す口実だよ。男二人と女一人じゃおかしいだろ?」

「翔さん、まじひどい」

「ごめんごめん。冗談だから」


けらけらと笑う翔さんがおもむろにチューハイを飲み始めた。


「飲む?」

「へ?」

「安心して。下心とかないし」


翔さんがあたしにチューハイの缶を握らせた。


「無理には飲ませないよ。具合悪くなったら言って」

「あ、はい……」

「あれ? 前飲んだことないって言ってたよね?」

「はい……。今日初めてですね」

「ほんと、希少価値だよ。真面目な奴でも高校卒業するとみんな飲み始めるじゃん」

「そう……ですね」


あたしはなんだか恥ずかしくなって缶のプルタブを起こした。


初めて口にした酒は、ジュースみたいだった。


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