エンドレス・ツール
もっとアルコール臭いのかと思ったから、びっくりした。


アルコール独特の匂いや味も感じない。


うちは父と兄貴がビールをしょっちゅう飲むから、アルコールが充満する匂いが苦手だった。


構えていたぶん期待外れできょとんとしてしまう。


あたしがしばらく缶を眺めていたら、翔さんが隣で笑った。


「それ、かなりアルコール低いから。いきなりロックとか焼酎は無理でしょ」

「これ、酔わなくないですか?」

「弱い奴は酔うけどね」


その時、なつの甲高い笑い声が聞こえてきた。


「やだあ、もう、ケイちゃんったら、わたしのことそんなに好きなんてえ~」

「夏香~」


見ると、二人は真っ赤な顔をして抱き合っていた。


「か、翔さん……」


慌てて横の翔さんを見ると、何事もないような涼しい顔で二人を見ていた。


「ケイゴは酔うと触り魔になるから。気にしないで」

「はあ……」


いや、この状況は気にするよね。


ていうかなつ、いつの間に飲んだんだ……。


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