エンドレス・ツール
「ねえ、名前なんてたっけ?」


さっきも言ったんですけど。


「……璃里香」

「え? 聞こえないんだけど。もう一回!!」


……しつこい。


「え、無視? きっついなあ~。璃里香ちゃん、彼氏は~?」


聞き返しといて、ちゃんと聞こえてるんじゃない。


めんどくさい。


「……すみません。ちょっとトイレ行ってきます」


さっきから絡んできている男を振り払うために、定番の逃げ道を使うことにした。


やっぱり来るんじゃなかった。


テーブルの隅でこっそりご飯食べてたのに、相手がいなかったらしいいかにも軽そうな男に絡まれるし。


あたしに興味ないのは、見た瞬間わかんだよ。


自分だけ男一人だと恰好つかないからって、あたしに声かけただけだろうが。


あんなん、誰も寄ってこないっつの。


胸の中で毒づきながら、席から離れた。


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