恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「彼氏ABCって……っていうか、やめてよ。角田の話とか」
「でも、よかったじゃん。あんなヤツと縁が切れて。
朱莉と別れてからしばらく大人しかったのに、また2股とかかけて一騒ぎあったらしいよ。
浮気相手の女の子が剣道部だったらしくて、竹刀持って追い掛け回されたんだって。
知ってた?」
「……知らない」
「かなり噂になってるよ。ホント、懲りない男だよね」
同じ学年の角田弘は、あたしの初カレだった。
サッカー部のエースで顔もそこそこいいから1年の時から女子には人気だったし、あたしも面識はなかったけど噂には聞いてた。
そんな角田と初めて話したのは、1年の夏、誰かの嫌がらせで靴を隠された時。
『どうかした?』なんて声をかけてきたのが、ジャージ姿の角田だった。
その時はまだ誰だか知らなくて、とりあえず靴がないって事を言ったら探し始めてくれて。
『もういいから』って言っても探し続ける角田の腕を掴んだら、『じゃあこれ履いて帰れよ』って、自分の下駄箱から大きなローファーを貸してくれた。
弾ける汗とキラキラした笑顔を残して、爽やかに立ち去る角田の姿に、気づいた時にはすっかりやられてた。