恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
“引く”
それはきっと避ける事じゃない。
こっちもいつも通りに過ごす中で引けなきゃ意味がない。
わざわざ早く来て、会わないように注意して……。
これじゃ、作戦が成功するより先に負けてるようなもの。
負けを認めて逃げてるだけだ。
「……会長と、なんかあったとか?」
「え……、」
山岸が急にそんな事を言い出すから、戸惑って答えに迷う。
誤魔化そうと、笑顔を作ろうとしたけど……。
でも、山岸が真面目な顔をしてたから、ウソがつけなくて、目を逸らした。
俯いていると、しばらくしてから山岸が聞く。
「朱莉って、会長の事どう思ってんの?」
「……え?」
「会長が好き、とか?」