恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
『会長が好き、とか?』
聞かれて思わず黙り込んだあたしと山岸の間に、いつもとは違う空気が流れる。
すぐに否定すればよかった。
そうすればこんな気まずい空気にならなかったのに……。
静かな空気が、出てこようとする言葉を邪魔する。
『会長』と『好き』
並べられた2つの言葉に、過敏なほどに反応しちゃって胸がうるさい。
忘れたくても頭の中に常に居座り続ける先輩の姿が、鮮明に浮き上がってきちゃって。
胸が……、イタイ。
「……違うよ。
そんな訳ないじゃん」
胸のドキドキを、痛みを、なんとか誤魔化そうと作った笑顔は、自分でも分かるほど引きつっていた。