恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
5..mission5
騒ぐ胸の理由
「うわぁ……、朱莉がへこんでる。
異様な空気出てるけど大丈夫?」
登校してきた仁美が、あたしを見るなり顔を歪めた。
結局今日も早く登校して机に突っ伏して。
プラスして異様な空気が出てるらしいあたしは、きっと誰が見ても落ち込んでいるのが分かると思う。
「なんか、角田の浮気以来の落ち込みようだね」
『角田』
聞きたくない名前も、今日は耳を通り抜けていく。
「今日も朝から生徒会長かっこよかった~」
「相沢先輩でしょ? もうたまんないよね~! あの顔も声もっ」
―――それに比べて。
『生徒会長』
『相沢先輩』
違うグループで交わされてる話題なのに。
選び取ったように先輩に結びつく言葉だけが耳にまとわりつく。
耳障りなくらいに、頭に響く。