恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「朱莉、凹んでてもいいけど今日お昼まで体育館で離着任式だよ。

朱莉が憧れてた沢田もくるよ?」

「……」


沢田先生は現代文の教師で、生徒に人気のある先生だった。

教育熱心で、生徒と真っ正面から向き合って、それでいて爽やか。


憧れる生徒も多くて、あたしもその中の1人だった。

3月に移動が決まった時は、何人もの女子生徒が泣いた。


そんな沢田先生が今日、再びこの学校に来る。


いつものあたしだったら。

1ヵ月前のあたしだったら人一倍喜んで、きっと仁美にうざがられてた。


だけど今は、あんなに憧れていた『沢田』の名前すら耳から抜けていきそうで。


それにハっとして、消えかけた『沢田』っていう名前を掴み取るように、勢いよく立ち上がった。



< 134 / 364 >

この作品をシェア

pagetop