恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
胸がドキドキするのは……。
『沢田』
その言葉のせいじゃない。
その言葉を言う、先輩のせいだ。
『生徒会長、ありがとうございました』
司会の言葉を聞いて顔を上げた時。
まだ壇上の上にいた先輩と、一瞬だけ目が合った気がした。
その目が、優しく細められた気がした。
その後、2時間以上に渡って行われた離着任式。
沢田先生の挨拶もネクタイの色も、何も覚えていなかった。
司会の近くで生徒会役員に指示を出す先輩が気になって、気付かれないようにその様子を見つめる事で精一杯だった。