恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
『名前くらい教えてもらえないと困るんだけど?』
首を傾げた先輩は、目の前までくると上半身を折って、カバンを胸の前で抱き締めるあたしの顔を覗き込んだ。
『そんなに見つめられると、思わず抱き締めたくなるな。
―――2年5組、青山朱莉さん』
『なんで、名前……』
『これからは毎日取り締まるから、なるべく派手は違反は避けた方がいいよ。
俺に捕まりたいなら話は別だけど』
吐息が当たりそうな距離で言われたせいで、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
だけど、すぐにからかわれてるって分かって、じわじわと怒りが浮かんできて……。
それが
あたしと相沢先輩の、冷戦の始まりだった。