恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
じっと見つめていると、先輩がふっと微笑む。
さっきの驚いたような表情はもうどこにもなかった。
そして。
「俺に止める権利はないよ。
校則は、恋愛まで取り締まってないし。
朱莉が山岸くんが好きなら、そうするのが自然だしね」
「……そう、ですよね」
顔を上げていられなくて、俯きながらそう答えて、先輩に背中を向けて歩き出した。
先輩も校門に戻るのか、足音が離れていくのが聞こえてた。
離れる自分と、離れていく先輩の足音が、だんだんと別のものになって聞こえなくなる。
そんな事にさえ寂しさを覚えながら、唇を噛み締めた。
期待なんか……、できる関係じゃなかったんだ。
初めからあたしと相沢先輩は、そんな関係じゃなかったんだ。