恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
もう作戦なんか立てるつもりなかった。
自分の気持ちに気付いた時点で、作戦なんて必要なくなったから。
あたしの『負け』だから。
だから、本当は山岸と付き合ってる振りなんか必要ないし、したところで何の意味もない。
だけど、一生懸命な山岸の言葉を否定するなんてできなかったから。
山岸は、あたしが断わろうとしてる事に気付いてた。
それでも、何度も何度もくじけないで話しかけて、笑いかけて。
いつもと同じ笑顔。
いつもと同じ笑い声。
……だけど、肩小さく震えてた。
顔が少しだけ強張ってた。
山岸の全部が、緊張と不安を伝えてた。
いつかは断わらなくちゃいけないのに……。
必死の山岸をを見ていたら、何も言えなくなった。