恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
よしって、気合いを入れなおすように気を引き締めて前を向くと、校門が見えた。
先輩が、見えた。
興味なさげに生徒達を眺めている先輩が、あたしを視界に入れた途端に優しく微笑む。
いくら期待しないって決めても。
ドキドキしないって言い聞かせても。
その顔を見るだけで胸が締め付けられる。
少しくらいは思われてるんじゃないか、なんて。
そんな事を思ってしまう。
……かなりの重症だ。
「おはよう。朱莉」
「……おはようございます」
いつもの通り、微笑みを浮かべた先輩と挨拶をする。
こんな事ですらうれしいと感じる自分に戸惑いながら、チラっと先輩を見上げた。