恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
涼しそうな顔も、細く骨ばった手も。
今まではイヤミにしか思えなかったのに。
今は……、
「朱莉?」
全部がかっこよく見えちゃって、顔を背けた。
「なんでもないです……」
ぷいって音がしそうなくらいに逸らした視線の先に、下駄箱前で友達と盛り上がる山岸の姿があった。
無邪気で楽しそうな笑顔は、こっちもうれしくなるくらい。
「毎朝迎えにきてくれるなんて優しい彼氏だね」
その言葉に振り向くと、先輩の視線も同じように山岸に向けられていた。
『彼氏』
先輩が言った単語に、口をきゅっと結ぶ。