恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
唸りながら人の顔を吟味する失礼な仁美をキっと睨んだ後、ダンと机に手を置いて立ち上がる。
「大丈夫! これでも数だけはこなしてるんだから。
彼氏ABCとの事だって、角田の事だって、全部この作戦に役立たせてみせるから見てて」
そうすれば、ABCだとか角田との苦い思い出も報われるし!
周りの視線が気になりながらも強く言い切ったのに、仁美はなぜだか苦笑いを浮かべてため息をついた。
「今度はなに?」
「そう言ってはいるけど、朱莉にはできないんじゃないかなーって思って」
「今回はやる気だもん」
「そんな事言ってても、もし本当に作戦通りになんかなったら、落ち込んだ相沢先輩を見て、朱莉はそれ以上に落ち込むと思うけど?
人を騙すなんて、なんてひどいことしちゃったんだろうって罪悪感に押しつぶされて。
違う?」
痛いところをつかれて、思わず黙る。
確かに……、相沢先輩が作戦通りあたしを好きになって振ったりしたら絶対に落ち込むと思う。
……それどころか、まず振れない。