恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
ぽつりと言うと、先輩が微笑む。
「それだけじゃないよ。俺も汚したりするかもしれないし。
それにこんな事しても、一時しのぎにしかならないしね」
「でも、一時しのぎだとしても、いじめられてた子にとっては救われた気分になると思う」
先輩が寂しそうに微笑むから。
咄嗟に言ったあたしを見て、先輩はふっと笑った。
「朱莉が取締りするようになってからは、いじめも随分減ったんだけどね」
「……えっ」
「俺が知らないとでも思った?
朱莉がいじめの現場に飛び込んで行くのは何度も見たし、噂だって流れてる。
“青山に見つかると面倒だ”って」
「……」
「でも、ここ最近そういう噂を聞かないからどうしたんだろうって気になってた。
いじめを取り締まるのは生徒会と教師の仕事だし、生徒の朱莉に頼む事じゃない。
だから強制するつもりもないし、危ないからできればやめて欲しいって思ってた」
そこで一度言葉を切った先輩が、あたしを見た。
「けど、何かあったのかなって、ずっと気になってたんだ」